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雪ヶ谷の小字を探る

かつて雪ヶ谷には,いくつかの小字(小名)が存在していました。小字とは村の中の小さな集落や耕地を指す地名です。通常「小字」は単に「字」と言い,「東京府荏原郡池上村大字雪ヶ谷字笹丸」のように使われていました。時代により数は異なりますが,雪ヶ谷には7から13ほどの小字があったことを確認できます。現在でもその一部はバス停や公園,もしくは自治会の名前として大事に受け継がれています。本稿では,『新編武蔵風土記稿』(江戸時代後期・化政時代)および『池上町史』(昭和7年)から雪ヶ谷の小字をみていきたいと思います。

『新編武蔵風土記稿』からみる雪ヶ谷の小字

小名  市ヶ谷方 南の方を云  髭山 西南の方なり  並木 東南の方なり
 花ノ木 これも東南の方なり  下 前に同じ  石川 西北の方なり  三谷 北の方なり

『新編武蔵風土記稿』によれば,雪ヶ谷村において7つの小字をみることができます。これら7つの小字を現在の場所に当てはめてみると,おおよそ以下のようになります。当時の雪ヶ谷村は呑川を中心に丘陵地を挟んだ谷あいに繁栄していたことが伺えます。

髭山は呑川西岸の小高い丘陵地で,この付近に氷雪を保存する氷室を作っていたと考えられています。石川は呑川のことを指します。現在の大田区石川町は,雪ヶ谷村に隣接していた石川村を由来とします。昭和30年代から40年代に実施された住居表示に伴い,雪ヶ谷町の一部(中原街道以北)は石川町や南千束に編入されましたが,雪ヶ谷村内にあった石川と石川村は直接の関係はありません。

『池上町史』からみる雪ヶ谷の小字

『池上町史』では,雪ヶ谷村内に13の小字をみることができます。

本村には地籍に依る左の字名を有す
笹 丸 旧字大境池上南
石 川 旧字石川川境向山下
長 家 旧字髪山
日下山 旧字髪山
西   旧字居村前畑前道畑通山下
宮 下 旧字柳町新田宮脇畑通
山 谷 旧字大塚宮脇
原   旧字道北畑通
狢 窪 旧字道北畑通
大 下 旧字花木畑道大原前
居 村 一名並木とも称す旧字居村前畑前道畑通
谷 中 旧字谷中
市ヶ谷 (一名市ヶ谷方とも呼ぶ)旧字市ヶ谷

旧字として古い地名が併記されていますが,『新編武蔵風土記稿』に出てこない地名も多く,読み解くことが難しい。他の資料で調査いたしましたが,『笹丸自治会史』(平成14)においても解釈できなとされています。なお,日下山の「旧字髪山」は「髪」ではなく「髭」の誤植と推測できます。

旧地名(小字)の名残を探そう

雪ヶ谷の存在した小字のおおよその位置を図1に示しました。残念ながら,これらの字は地名としては残っていません。しかし,バス停や公園,橋梁,自治会の名称として見ることができます。先人たちの「古い地名を大切に残したい」という気持ちの表れでしょう。

【図1】雪ヶ谷に存在した小字のおおよその位置

図1 雪ヶ谷に存在した小字のおおよその位置

・国土地理院淡色地図(25000)を元に雪ヶ谷に存在した小字のおおよその位置を赤文字で加筆した。
・この地図は,国土地理院長の承認を得て,同院発行の電子地形図(タイル)を複製したものである。(承認番号 平26情複, 第493号)
・なお,この地図を第三者がさらに複製する場合には,国土地理院の長の承認を得なければならない。

小字と住居表示前の番地(昭和初期)

小字旧番地
笹 丸池上町大字雪ヶ谷    1番地 〜   72番地
石 川池上町大字雪ヶ谷   73番地 〜  234番地
長 家池上町大字雪ヶ谷  235番地 〜  289番地
日下山池上町大字雪ヶ谷  290番地 〜  449番地
西  池上町大字雪ヶ谷  450番地 〜  550番地
宮 下池上町大字雪ヶ谷  551番地 〜  625番地
山 谷池上町大字雪ヶ谷  626番地 〜  701番地
原  池上町大字雪ヶ谷  702番地 〜  826番地
狢 窪池上町大字雪ヶ谷  827番地 〜  879番地
大 下池上町大字雪ヶ谷  880番地 〜  981番地
居 村池上町大字雪ヶ谷  982番地 〜 1125番地
谷 中池上町大字雪ヶ谷 1126番地 〜 1233番地
市ヶ谷池上町大字雪ヶ谷 1234番地 〜 1350番地

小字の名残

<参考資料>

  • 笹丸自治会史編纂委員会(2002) 『笹丸 笹丸自治会史』 笹丸自治会.
  • 田村長・池上町史編纂会編(1932) 『池上町史』 大林閣.
  • 幕府昌平黌地誌編纂局編(1817) 『新編武蔵風土記稿(巻之四十五) 荏原群之七 馬込領』 昌平坂学問所地理局.

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